人生、いまも青春の中。ワーキングフォーエバーし続けていくことで、新しい世界が広がっていく/公益社団法人 中央区シルバー人材センター

仕事への愛にPRを掛け合わせたら「POWER」になる、をテーマに、毎回わくわくした気持ちを忘れずにWorking Foreverしつづけている仕事人にお話を伺うインタビュー企画「LOVE×PR=POWER」。

今回ご登場いただくのは、実際に「ワーキングフォーエバー」な人生を体現されている「公益社団法人 中央区シルバー人材センター」の皆さまです。運営スタッフとして働く木場美穂さん(当時)、シルバー人材センターの会員を経て、運営スタッフ側に回り、就業専門員を務める田嶋隆俊さん、そして会員としてご活躍の鈴木暁子さん、須貝良民さん4名の方々です。木場さん以外は、皆さんなんとアラウンド80‼シルバー世代のお仕事への向き合い方をお聞きしたいと思います。聞き手は、㈱WORKING FOREVER代表の西澤が務めます。


WORKING FOREVERと「ワーキングフォーエバーなシルバーさんたち」との出会い

― わたしは中央区で「WORKNG FOREVER」という名前のPR会社をやっています。「WORKING FOREVER」という会社名には「おばあちゃんになっても10代20代の頃ような新鮮でわくわくした気持ちのままで、ずっとずっと仕事をしていきたい」そんな思いが込められています。2018年の立ち上げから5年、そのうち約3年がコロナ禍という状況を経て、今やっと水面にぷはー!っと顔を出せた気分です(笑)。そう、改めて今がスタートライン、そんなタイミングで本日皆さまとのインタビューが実現しました。本日はどうぞよろしくお願いします。

一同:よろしくお願いします。


-中央区シルバー人材センターの存在は、たまたま区役所で知りました。「WORKING FOREVER」という、自分の会社の名前とあいまって、なんとなくシンパシーを感じたのがきっかけです。独立したばかりのまだ一人きりで走っていた頃から、本当にたくさんのシルバー人材センターの皆さまに助けていただいてきました。田嶋さん、初めてお会いした時のこと、覚えていますか?


田嶋隆俊さん(以後田嶋さん):よく覚えてますよ。負けず嫌いな子だなって(笑)。

写真上:70歳で生まれ育った金沢から上京してきた田嶋さん(中央区シルバー人材センター就業専門員)。それから10年。今ではすっかり東京に慣れ親しみ、日々中央区を縦横無尽に駆け回っている。


-今でも口喧嘩しますしね(笑)。田嶋さんとの出会いは、もともとはFAXの設定に詳しい方を紹介してもらおうと相談したのがはじまりで。「わしはペンよりもパソコンを触ってきたほうが長いんじゃ」とおっしゃって、その辺の若者よりもずっと詳しくてびっくりしました。田嶋さんは現役時代パソコン関連のお仕事をずっとされてきていらしたんですよね。デジタルの知識が凄くて。シルバー人材センターにはこんなすごい人がいるんだ!と感動したものです。

田嶋さんはじめ、わたしがシルバー人材センターさんからご紹介していただいた方々は本当に素晴らしい方ばかりでした。会社設立当初、事務所に「WORKING FOREVER」と大きく書いたパネルを飾っていたのですが、皆さんそれを見て「素敵な言葉ね」とか「共感します」と言ってくださったのを覚えています。実際にワーキングフォーエバーを体現されている方々の口からそう言ってもらえて、私自身とても勇気づけられました。


木場美穂さん(以後木場さん):「公益社団法人 中央区シルバー人材センター」は中央区に在住の60歳以上で、健康で働く意欲がある会員の方にお仕事を紹介しています。会員さんは、企業やお店、団体など仕事の発注者との契約ではなく、センターに会員登録していただきます。センターがお仕事を受け、それを会員に紹介します。受けた仕事は誰もが閲覧できるように公開し、また同じお仕事は5年で卒業していただくことで、新しく入った会員にも公平に仕事を紹介できるようなルール作りを心がけています。


-会員さんにお仕事を振り分けるとき、気を付けていらっしゃることはありますか?

木場さん:よくハローワークさんと間違われる方もいらっしゃいますが、シルバー人材センターは高齢者の雇用を専門にしているので、仕事を受ける段階で高齢者の方々に無理なく働けるかを見極めながらお仕事の振り分けを心がけています。この仕事は1人だとちょっと難しいので、3人でやらせてもらえないかなどの調整や交渉も積極的に行っています。他にも例えば仕事の現場が危険な場所でないか下見にいくこともありますし、専門性の高い依頼や、仕事内容によっては、一度持ち帰って会員の方々に意見を仰ぐこともあります。

自治体によっては会員数が2千人3千人のところもある中、うちは約700名、平均の稼働人数が450名程度と規模が小さいこともあるからできる対応で、中央区の特徴かもしれません。また、健康の意味ですが、皆さま年齢的にもどこかしら不調はあったりしますので、仕事に支障なく元気に働ける方、としています。仕事は大きく分けて単発と継続の2種類があり、基本的にその仕事が完了すれば終わるのが単発、3か月以上、例えば飲食店などに同じ時間、曜日で勤務するようなお仕事が継続です。

写真上:「センターにいるとわかるんです、年齢ってつくづく数字じゃない!年々若返っていく姿に仕事を続ける大切さ、感じます」公益財団法人 中央区シルバー人材センター次長 木場さん(当時)


「あなたを見てると亡くなった妹を見ているみたいでほうっておけないのよ!」

- 鈴木さん、そう、鈴木さんのことは親しみを込めて「あきこママ」と呼ばせていただいているのですが(笑)、ママと私の出会いは2年程前。その愛すべきキャラクタ―から「あきこママに会いたい!」と、うちのメンバーの間でも大人気です。


一同 笑!! 


田嶋さん:元バリバリの銀座のママさんの鈴木さんだから、「あきこママ」の愛称はぴったりだね。


-2年前といえばコロナ禍で世の中の動きが止まって、その後も停滞の時期が続いていました。本当にいろいろ大変なことが重なって一番苦しかった時期でした。そんな折に田嶋さんが「あんたは頑張り屋さんだけど、もっと人に頼ることをせにゃいかんよ」と。一人で何でもかんでも背負って苦しんでいる私に、あきこママを紹介していただき、事務所の清掃や片付け、なんかいろいろ本当に助けていただきました。


鈴木暁子さん(以後鈴木さん):あらやだ!懐かしいわぁ。


写真上:25年間、銀座のママをされてきた鈴木さん(中央区シルバー人材センター会員)。WORKING FOREVERでも「あきこママ」の愛称で親しまれている愛されキャラ。


- ママとの関わりも楽しくて。仕事の合間に会社の目の前にあるコーヒー屋さんで一服したり......。今でもコーヒー屋でばったり会いますもんね。ママに会えると安心します(笑)。


鈴木さん:あなた見てるとね、なんかね、亡くなった妹を見てるみたいで。妹も頑張り屋だったのよ。負けず嫌いで。だからほうっておけなくって。


-「無茶したら、おしりペンペンするわよぉ!」ってね。私も結構いい大人なのに(笑)、そんな風に気にかけてくださるのもありがたいですよね。あきこママは今銀座の老舗バーでシルバー人材センターを通して働いていらっしゃるんですよね。わたしも何度か飲みに行かせていただきました。ママは築地から銀座まで自転車を飛ばして、本当に若い!(笑)


鈴木さん:わたくし今日はね、こうしてインタビューのためにセンターにきましたが、昨夜も夜中の1時くらいに、自転車を飛ばして自宅まで帰ってきました。火・木・土曜の週3回、夕方から0時まで、グラスを洗ったりする裏方のお仕事です。現役(銀座のママ)時代は、それこそ自転車に着物を載せてお店まで行き、時には着物のまま自転車をこいで帰宅なんてこともありましたから。深夜ですけどね、築地警察のおまわりさんもご存じです(笑)。今はエプロン一枚ですから、身軽なものです。


- 夜中の1時!若者でも夜遅くまで働くのは大変だと思うのに、ママは本当にパワフル!

写真上:あきこママの足元は可愛らしい厚底靴。銀座まで自転車を飛ばして通っている。


木場さん:銀座の老舗のバーからシルバー人材センターにお仕事の引き合いがきたとき、夜の時間帯ですから、会員さんも苦手な方が多いだろうと、どうかな?と。鈴木さんなら、元祖・夜のオンナ! 場所も銀座だし、抵抗なく受け入れてくれるんじゃないかな、とアタックしたらすんなり受けてくださって。うまくお仕事とマッチして、喜んで働いていただけると、私たちもうれしいのですよ。


田嶋さん:仕事のマッチングというのは、実は思っている以上に難しいものです。会員さんの性格や経験も知らないといけないし、発注するお客様の状況も把握して、要望に応えなくてはいけない。その上で会員さんも喜んでくれるし、お客様も満足してくれる、そういういいマッチングができればいいんだけれど、すぐにそうなる場合もあれば、時間はかかるけれども、どんどん距離が縮まっていって、最終的にいい関係になることもある。少し長い目で仲を取り持っていく必要もあります。

現役時代に苦労したからこそわかる、仕事を回してもらえるありがたみ

須貝良民さん(以後須貝さん):僕はシルバー人材センターの会員歴は長くて、15年以上になります。79歳なんですよ、今年で。


-79?!!えーーー!!見えないです。肌もつやつやされてて、声も若々しいし。というか、須貝さんに限らず、田嶋さんもあきこママも、みんなお若くて元気。何より好奇心いっぱいで、だんだん高校生の方々とお話しているような気分になってきました(笑)。

写真上:「元気だから働ける、働いているから元気になれる!求められて感謝されることが生きがいに!」須貝さん(中央区シルバー人材センター会員)


須貝さん:(笑)。現役時代は親の代から譲り受けた工務店をやっていました。工務店とは名ばかりで、戦後、親の代で工務店という商売はもう飽和状態っていうんですか、既にこのあたりはもう家が立ち並んじゃって…譲り受けたはいいものの、仕事が激減の時代でした。一日に電話が一本も鳴らないんですから…。仕方なく「一人大工」っていうんですかね、外に働きに出ました。グループの中に入れてもらって働いたりもしましたけど、仲間って感じではないですし、仕事がない大変さは身に沁みました。その、困った時の苦労があったから、この年になってもこうしてシルバー人材センターから仕事を回してもらえて、いろいろな人と接して、仲間ができて、ありがたみをしみじみ感じています。


-シルバー人材センターではどんなお仕事をされてきたのでしょう。


須貝さん:最初の仕事は、築地のあかつき公園の子供たちが使うターザンロープやロッククライミングの遊具などの設置や整備をやらせてもらいました。ここでは公園に散歩や遊びに来る地元の人たちとも自然と仲良くなっちゃって、楽しかったですね。そこを数年やって卒業、次がリサイクル関連事業の一環で小学校を回りました。地元もいいけれど、せっかくなら日本橋地区にしようと。2人一組でチームを作るんですが、小学校を6校くらいは回ったかな、おかげで日本橋の地理は知り尽くしちゃうし、普通にしていたら会えないような人と接することができて面白いんです。もちろん、チームを組んだ人とは仕事を通して深く知り合える。田嶋さんもその時はまだ会員で、とにかく働き者でね、見習わなきゃと思ったし、いろいろ教えてもらって本当に感謝しています。


-あかつき公園の遊具、うちの子供もお世話になりました!そして田嶋さんが働きものなのもわかります!(笑)。この間お会いした際も、自転車にパンパンに仕事道具積んでいらしてました!


須貝さん:そこも卒業すると、今度は学校のポスター関連のお仕事をいただきました。一人で担当するので仲間はいないんですが、別件で年に一回、学校の夏休み期間をはさむ約2か月間の、じゃぶじゃぶ池の管理業務のお仕事もきました。これは、真夏の暑い中、10名程度のチームで大勢でやるんですが楽しかったな~!鉄砲洲児童公園、月島第2児童公園、久松児童公園、越前堀児童公園、その年ごとにいろんな公園に行きましたけど、子どもたちの見守りや水質管理、清掃作業、みんなでブラシ持ってね、池というかプールを清掃するんです。今でもその時の仲間とは続いていて、一生の友ですね。


-お仕事を通して、一生の友と呼べるお友達もできて。素敵ですね。


須貝さん:他には、単発になりますが、80歳とか90歳のお年寄りの方のお宅に伺って、電球や電灯の取り換えとか、カーテンの取り換えの仕事があります。


-そういうお仕事もあるのですね?

須貝さん:はい。要は高いところの作業です。カーテンを外すことはできたけれど、かけられなくなって困っているとか、ね。やっと歩けるような状態だったり、しっかり立つことができなくて玄関まで這うようにして移動されるような方、足が不自由でカラダが思うように動かない方からの依頼です。ピンポンとチャイムを押しても、なかなか出てこられない方もいて、最初はお留守なのか、何かあったのかと心配したこともありました。そのお宅で仕事をすると皆さんものすごく喜んで感謝してくれてね、そうするとこちらも本当にうれしい。そしてまた次も声がかかったりして…。もうこちらのほうが感謝ですよ。こういうやりがいはシルバー人材センターで仕事をして初めて知りました。仲間、お客さん、とにかく色々な人と知り合えて、感謝されて、こうして働かせてもらえるのはありがたいな、まさにワーキングフォーエバーだな、と。


-やりがいがあるから、張りがあってお若いんですね。「ワーキングフォーエバー」という言葉を、一番言ってほしい人たちに言っていただけて、なんだかとてもうれしいです。


須貝さん:この「ワーキングフォーエバー」、社名ですか? ワーキングは働くだよな、フォーエバーって何だっけ、永遠にとかそういう意味、「そうか!」、と。今日知ったんですよ(笑)。


一同:笑。


仕事を通して、新しい人、場所、街を知って、世界が広がっていく

田嶋さん:須貝さんが若くていきいきしているのは、仕事を通して日々出会いがあって、新しい人、場所、街を知って、知ることのワクワク感も理解している、そのためにはこれからも仕事をし続けたい、ワーキングフォーエバーし続けたい、そんな希望もちゃんと持っているからですよ。これは何も西澤さんのところの社名の話じゃなくて、ワーキングフォーエバーの本質の話です。

―田嶋さんは、もともと金沢で暮らされていたんですよね。


田嶋さん:はい。私はちょうど10年前、70歳で金沢から東京に出てきました。「70歳で何をしに東京にきたの?」と、当時色々な人に聞かれました。それはなぜかというと、現役を離れるときに上司で恩師であった人に、「これからはお互い美しく老いていきましょう」と言われたのがきっかけなのです。その時はぴんと来ていなかったのですが、その後だんだんと美しく老いるとはどういう事かを考えるようになり、そんなときに出会ったのが、アメリカの幻の詩人サムエル・ウルマンの「青春」という一編の詩でした。

詩の冒頭で、青春とは人生のある期間を言うのではなく、心の持ち方を言うのだ、と。年を重ねただけで人は老いない、理想を失う時初めて老いるとあって、簡単に言うと、人は心の持ち方、夢や希望や情熱を持っている間はいつまでたっても青春ですよ、ということです。これに感銘を受け、美しく老いることはこのことだと思ったのです。で、このままここにいてはだめだ!と。


―それで東京に。


田嶋さん:ところが現実は厳しかったですね、70歳を超えたら金沢はもちろん、東京にも仕事はなかったんです。ハローワークに行くでしょう。応募要項には年齢制限は書いていないけれど、問い合わせをしてもらうと「ぜひうちに来てほしいのですが、定年が65歳の会社なので、残念ながら…」どこもみんなそうでした。ひとつだけ年齢制限がないところがあって、それは今でも続けていますけれど、マンションの清掃の仕事で、でもひとつだけじゃ時間を持て余してしまうし。結局ワーキングフォーエバーをかなえるにはシルバー人材センターしかなかった。

仕事をしようという気持ちがあって、元気があれば、シルバー人材センターなら仕事ができる、そこがハローワークとの大きな違いでした。それで、センターに登録させてもらい、それからはもうたくさん仕事をもらいましたね。仲間ができ、人を知り、人と出会うってことは知らなかったこと知るっていうことで、発見がある、まさにウルマンの詩です。また、わずかでも報酬がもらえるのもやりがいにつながります。年齢がいったら千円でも2千円でももらえるっていうのはうれしい事です。孫にちょっとしたものを買ってやれる、シルバー人材センターの存在意義は大きいですよ。


―こうして皆さんの話をきいていると、キラキラしていて、気持ちも瑞々しくて、みなさん、15,6歳ですか?って。ワーキングフォーエバーのコンセプトも「おばあちゃんになってもティーンエイジャーの気持ちのままで」というのがあり、なんかやっぱりこれだな、私の求めていたものは、と。すごくうれしいです。

経験や過去、プライドにとらわれていると道は開けない

田嶋さん:私はいま会員さんに仕事を紹介する、言ってみればコーディネーターの役割をしているわけですが、会員さんの中には仕事をいくら紹介しても、あれもダメこれもダメと断り続ける人がいるんです。なんで断るのだろうと。よくよく話を聞いてみると、見えてきたのが、結局は「プライド」なんですね。


―と言うと?


田嶋さん:こう思うのは僕だけかもしれないけど、現役を退いたら、人はいったん自分を捨てないといけない、「ただの人」にならないと。これまでの経験、すなわち過去にとらわれていると前に進めないんです。そのプライドは持っていてかまわない、でもいったん手放して裸になってみれば、自由で楽になれる。ただの人になれたらそれこそ残された20年、30年はすごく豊かな人生が送れると言いたいです。


木場さん:確かに田嶋さんの言う通り、プライドを捨てられない方はなかなか思うようなお仕事ができていないかもしれませんね。でも大事にしていたプライドは、いったん置いただけで、これまでの経験が必要になる時が必ずまたやってきます。実は、須貝さんも鈴木さんも、お願いしたお仕事をこれまでめったなことでお断りされたこと、ないんです。最初はやる気全開とまではいかなくても「まずは食わず嫌いをしないで、やってみてください」とお伝えしています。

こちらも、1つやっていただくと、あ、こう言う仕事は安心してお任せできるのか、とか、お互いの理解も深まってきて、では、次はこれはどうかな、とどんどん仕事の幅も広がっていきます。また、幾つかお仕事を経験すると、仲間ができたり自信がついたりして会員さん自身がだんだん変わってきて、気が付くと放つパワーが違ってくる! そこでの出会いや経験が思いもよらぬ方向に事が転がることも多いんです。

田嶋さん:あとね、年を取ってくると私もそうですけど、失敗するのが怖いんです。若い人ならたとえ失敗しても、もちろん落ち込んだりはするだろうけれど、復活も早いです。でも私たちは違う、立ち直れなくなるくらい傷ついたりするんです。骨折だって、若者はすぐ骨がくっつくけど、高齢者にとっては命取りです、心もそれとおんなじなんです。だから仕事への一歩を踏み出せない方もいるんじゃないかと思います。


木場さん:でも安心してください。シルバー人材センターは、最初からそんな難しい仕事をお願いしたりしませんから! あとは、もし失敗しちゃっても、その経験を次に生かすこともできます。


鈴木さん:私もね、本当に色々なお仕事を紹介していただきました。今はね、本当に合っていて楽しいです。


一同 それはよかった!!

田嶋さん:中央区という場所柄、うちには九谷焼のすばらしい器で料理を出すようなお店や会員制の飲食店など、銀座のお店からほかにも引き合いがあります。ただ、銀座には銀座独特の雰囲気があって、それに馴染めない人もいる。その場合は会員さんもつらいので、その方に合う場を紹介しなきゃいけません。人によってどこへ行っても馴染むことができる人、こういう場所はちょっと苦手というのがある人、そういう違いもあります。中央区を知り尽くして、今では銀座にもなじんでいる私ですが、10年前は、「なんであんな怖い街にわざわざ行ったの」と言われていましたからね(笑)。シルバーでたくさん仕事を経験するうちに、どこの水にもなじむ性格に変わったみたいです。


―あきこママにも合うお仕事、そうでないお仕事はありますか?


鈴木さん:わたくしはこういう性格でしょ、だからどこにでも馴染むというか(笑)。「この方はどんなお話をなさるんだろう」と、いつも興味を持っていくから、どこがダメとかはないんです。もちろん、ちょっと気を遣って対応しなければ、というお仕事もありますよ。例えば、お子さまがいて、奥様が外で働かれていて、旦那様がお家にいるお宅でのこと、キッチンにしてもお掃除に関してもどこまでやっていいのか、塩梅が非常に難しいときは、迷いながらしか進めなくって…。だけどお仕事を紹介してくださった田嶋さんの顔をつぶしちゃいけない!って、そう思ってやっていました。

木場さん:会員さんが頑張ってくださってもしっくりマッチングしない、そういうケースも時にはありますが、そうやって皆さん、期待に応えようと質の高いパフォーマンスを発揮してくださる。そのおかげで実績ができ、口コミや評判が広がり、ご自身はもちろん他の会員さんの働く場やチャンスまで広がっていくんです。


田嶋さん:つまり私たちは、仕事を紹介するだけじゃダメなんです。現役を離れてある程度時間がたっている人も多いし、これまでずっと専業主婦で働いたことがない方もいるわけです。第一に仕事がちゃんとできるかどうかという不安、二つ目に、仕事上のさまざまな相手とうまくコミュニケーションをとっていけるかどうかという不安、皆さん多かれ少なかれ不安を抱えてここにやってくるわけです。その不安をどういう風に和らげて仕事をしてもらうか、そこは大事だと思っています。人を見て後押しをする、っていう事です。

元気だから仕事ができて、仕事をするから元気が出る。この好循環が長く続いてほしい。

―そんな風にフォローしてもらえるなら、がんばろうってなりますね。今、寿命も延びて、ワーキングフォーエバーという考え方も浸透してきました。とはいえ、シルバー人材センターのような場所を知らなければ、年齢で振り落とされたり、厳しい現実がたくさんあると思うんです。それでも人生は続いていきます。だからこそ、仕事をしつづけること、あるいは、仕事をしつづけていたいという気持ちでいることが大切だと思うのです。


須貝さん:僕もそう思います。地元でぼくらより年若い、年寄り連中が集まって、自分たちができることを見つけよう!というコミュニティがあるんです。興味を持って顔を出したことはあるのですが、なんだかしっくりこない。私なんかは古い人間なのか、健康で能力もあるのに、高齢だっていうだけで働かないというのはもったいない気がするんですよね。「シルバー人材センターに行ってみたら?」とつい言いたくなっちゃってね(笑)。でも、これまで十分働いてきたんだから、これからはゆっくりしたいというはっきりした考えを持っている方たちの気持ちもわからなくもない。

ただ、自分はやっぱり健康なかぎり仕事をしていたいです、それこそフォーエバーだな、と。体力はね、現役のころより当たり前ですけど落ちてきてはいます。お金だけのことを言えば、長時間働いたほうがいいんだろうけど、例えばシルバー人材センターの単発のお仕事で、40階、50階の高層マンションの粗大ごみを地下まで下ろす仕事があるんです。タンスとか大きな家具がね、購入したときは入ったけれど、今は物が置いてあって出せなくなっていたりするわけです。


―高層マンションの粗大ごみを運ぶお仕事、重くて大変そう。。。


須貝さん:はい。力仕事で大変なんです(笑)。でも僕は大工だったから、解体ができちゃう、現場の様子でどうにも出せないとわかったら「解体してよろしいですか?」で、全部バラバラにした上で運び出します。この仕事が1時間でやるのですが、無事終わるとやったな~という何とも言えない達成感があります。長時間の仕事をして、お金を稼ぐのが現役だとしたら、お金にしたらわずかだけど1時間で終えて、達成感も得られるのが今、かな。


―その達成感や充実感は大切ですね。


須貝さん:八丁堀に湊湯っていう銭湯があって、70歳以上の区民は1回百円で入れるし、なかなかいいんですよ、ヒノキの香りも漂っていて。仕事で身体を使って汗もかくでしょう、今日は本当に疲れたな~という日は、熱いお湯にゆっくりはいって、水風呂で締めて家に帰ってくる、達成感はもちろん充実感が半端ないです。


―頑張った自分へのご褒美、まさに至福の時ですね(笑)。

須貝さん:はい、まさに! それが続けられるといいなと思っています。身体が元気だから続けられるのですが、実は仕事のおかげで健康なのかもしれないなと思います。


―お話をお聞きするにつれ、ともすると現役を引退すると、昔の話、昔の知り合いで自分の世界が止まってしまうところが、仕事が、また新しい場所、新しい人、新しい考え方に連れて行ってくれる。自分の世界を拡げてくれるんだなと感じます。


須貝さん:シルバー人材センターで毎年カレンダーをいただくんですよ。それを見ながら、いついつの次の仕事には台車が2台いるな、とか、少しでも早く終わらせたいから、新しい道具も試そうかとか。考える時間も楽しいですね。その場の状況次第ではこんなやり方に変更もできなきゃとか、そう考えると、私の場合身体を使う仕事が多いですが、頭も結構使っているのかもしれません。


―お話伺っていて、なんていきいきしているんだろうと。


田嶋さん:年寄りなんだけど、年寄り臭くないよね。心が若いんです。(僕たちは)そりゃ見た目はシミとかしわとか老いてますけど、心は若い!


年齢って数字じゃない。最初は元気がなかった人も、仕事を通してどんどん若返っていく。

木場さん:これからの人生を考えたとき、町会の集まりでも、趣味のサークルでも、自分に合ったコミュニティ探しって重要だな、と思います。昔の自分で止まってしまうと、一気に老けてしまうけど、新しい経験、新しい友達ができると、どんどん変わっていかれます。ここに来る方でも、最初は元気のないように見える方もいるんです。でも、お仕事をご紹介して「あの現場ならお仲間もできそうだな」などと想像していると、次に会った際はみるみる元気になって、「よう、元気?」「あら、おひさしぶり~」とか、もう声の張りからして違うんです。それを見てきていますから、本当にセンターにいるとつくづく年齢って数字じゃないって実感しています。しかも、お仕事継続している方ほど年々若返っていくんですよ。


須貝さん:月に一回、センターに前月の仕事の報告書を届けるんですが、その日は交流会も兼ねていて、サロンで自由に歓談できます。前の仕事で一緒だった方にばったり会ったり、時には待ち合わせしたりとね、どんどん輪が広がっています。

木場さん:実は、コレ、郵送でやっているセンターも当然多いのです。どうしても都合が悪い場合はしょうがないのですが、うちはあえて持参してもらっています。「そんなに広くない中央区、月に一回くらいはセンターにお顔を見せてくださいね!」的なノリでお声がけしています。


田嶋さん:私はシルバー人材センターを知ってもらうきっかけはどんなルートでもいいと思っています。前職何をしていてもいい、そんなことは一切関係ありません。ただ、これからの人生が豊かになる、ワクワクしながら働いてもらえればそれでいい、と。


木場さん:先日もとある研究機関からの要請で、ロボットと会話するモニターのお仕事が舞い込んできまして。会員さんも最初は「ロボットと会話するなんて、自分には無理!」「どうやって会話すればいいのかとまどう」などと不安がられていたのですが、いざ始まったらロボちゃんと楽しそうに会話してくださって、最終的には「テレビでは見ていたけど、仕事を通じてロボットとお話できるなんていい経験ができました!」などのお声が多くて。皆さん最初は不安でも、実際は好奇心旺盛で、新しい事にも立ち向かえる方が多いのです。

田嶋さん:身びいきな発言になっちゃうんだけど、「中央区のシルバー人材センターはレベルが高い」、なんてお声もいただくんですよ。これもつい最近のお仕事で、日本の伝統工芸を外国の方に説明する通訳のお仕事がありました。この仕事、通訳だけじゃなくて接客の仕事もしなくてはいけなかったのでちょっとどうなるか心配もありました。

会員のみなさん、現役を離れて最初は尻込みするところもあったんですが、実際現場で使い始めたら、感覚がどんどんもどってきて、最後はもう積極的に会話してくださったそうです。おかげでこのお仕事はまた次も継続していくことになりました。後で話を聞くと仕事が決まってから英会話を勉強しなおしたりしていたそうで、そんな見えない努力に対してリスペクトの気持ちです。


木場さん:今回の会員さんたちは、「英語を使った仕事がしたいんです、英会話が得意なんです」というのではなく、他の仕事も色々やって、トライ&エラーも繰り返してきた方ばかりです。たまたま、それこそ、いったん置いておいたプライドが役に立った例です。しかも英会話ができるだけじゃだめで、この方なら接客もできるだろうというのを、他の仕事を通して知っている、だから私たちもお願いできるわけなのです。


田嶋さん:お客様の要望もだんだんと高くなってきて、例えば築地の市場、今は英語だけじゃなくて、中国語や韓国語ができる人がいいと。そんな人は会員にもごくわずかしかいませんし、それ以前に接客ができないとダメなわけです。それは難しいとお伝えしたら、まずは、英語が少し話せて、接客ができる人を、となりました。

実際これもはじまってみたら、会員さんが見よう見真似で中国語や韓国語を話すようになり、さらに自分でも勉強してくださって、カタコトではありますが、なんとかうまく接客できているそうで、シルバー人材センターはすごいらしいと。その口コミのおかげもあって、また新たなところからもお仕事のお話がきています。


木場さん:もちろん会員の、誰もがそういう現場にという話ではないですし、もし九谷焼の器を割っちゃったり、失敗したりしたら、ご本人がショックを受けます。マッチングは慎重に、なのです。でも、そうやってどんどん新しいお仕事がくるようになるのは、とてもうれしい事です。


―お話をきいているだけでますますワクワクしてきました。最後になりますが、シルバー人材センターに登録してみたいと思っている方にメッセージがあれば。


木場さん:もし少しでも働くという選択肢があれば、是非お気軽にいらしてください。自分のコミュニティが一つ二つ増える、そんなコミュニティ探しのためでもかまいません。ガッツリでも、ゆるっとでも、その方のライフスタイルに合わせた働き方をご提案させていただきます。


田嶋さん:私自身は仕事が大好きですが、仕事だけが人生ではないのも理解しています。家にいてテレビばかり見ていてボケるのが心配、そんな時は一歩踏み出してみてください、つまりきっかけは何でも構わないのでお気軽に来てほしいのです。シルバー人材センターの門戸は広いですから!動機はなんでもいいんです。お小遣いを稼ぎたい!いいじゃないですか!仕事を通して、結果誰かが助かればすべてが社会貢献です!これからの人生、自分を生かさないともったいないですから、そのお役に立てるようにお手伝いします。


―きょうは貴重なお話をどうもありがとうございました。㈱WORKING FOREVER第2章も、今日頂いたお話で元気にスタートして参ります!

取材・執筆:咲奈/撮影:Akiko Sugiyama


公益社団法人 中央区シルバー人材センター 

東京都中央区八丁堀3-17-9 

E-mail chuo@sjc.ne.jp TEL 03-3551-2700

URL https://webc.sjc.ne.jp/chuo

[ライター咲奈のあとがき]

今回もまた刺激を受けたインタビューでした。インタビューの進行をどちらが務めるか、当日の流れを見ながら臨機応変に、などど前日に打ち合わせまでしたのに、結果すべて西澤さんが持っていきましたっ!咲奈としてはそれも納得のお話の展開。インタビューの最後の最後に西澤さんが、「初対面の人にワーキングフォーエバーの社名を言うと、反応が2つにわかれるんです」、という話を。「一生働くってすごい社名ですね」「めちゃめちゃ働かされるブラック企業⁈ですか」というリアクションがある一方で、「素敵です」、「共感します!」と回答される派も。今回改めて自分はどのようにワーキングフォーエバーしていくべきか再考。とにかく元気をたくさんもらえて、個人的には年を重ねるのが怖くなくなりました! 今回のインタビューに関わっていただいたすべてのみなさま、ありがとうございました。

取材・ライティング/咲奈

出版社にて雑誌、書籍の編集を経験。心ときめくワクワクを求めてライターを志す。ときどきヨガ講師、趣味はジャスダンスと舞台観劇。ヅカファンでもある。

LOVE×PR=POWER

仕事への愛にPRを掛け合わせたら、「POWER」になる。 愛情と情熱を持って仕事に向き合う人々のポジティブなチャレンジをPRの力で応援する WORKING FOREVER発・インタビュープロジェクト。

0コメント

  • 1000 / 1000